現在、李保華老師は日本を活動の中心にされ、東京で会員制教室を開講しながら、世界中で馬貴派八卦掌を教えられています。
馬貴派八卦掌を学ばれたい方は、公式サイト:馬貴派八卦掌伝播中心を御覧下さい。

2009年1月31日土曜日

2009冬:八卦掌講習会(8)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏
  2. 単換掌
  3. 双換掌
  4. 揺身掌
  5. 揺身掌単操蟹形
  6. 揺身掌単操肘打
  7. 順勢掌
  8. 順勢掌+翻身掌
  9. 磨身掌
龍形八大母掌で「大」「母」という字が使われているのは、熊形などその他の掌法が手法の違いだけであって、歩法と身法はすべてこの八大母掌と同じであるためだそうです。古くは翻身掌も加えて、「単双順三揺磨回転」あるいは「単双順揺磨回転翻」が八大母掌とされていたそうです。
前四掌と後四掌には以下のような対応関係があるそうです。
  • 双換掌と揺身掌
  • 順勢掌と磨身掌
  • 三穿掌と回身掌
ただ今日の講習では三穿掌・回身掌・転身掌の練習までにはいたりませんでした。

単換掌や双換掌において力を出すとはどういうことか、それは結果を求めるのではなく、力が出る構造を求めるのであるとして、パイプ椅子を使ってその例を示していただきました。パイプ椅子が斜めになっていると不安定で少しでも力をかけると崩れてしまうし、スムーズに動かせない。水平に置かれていれば安定しているので力を強くかけても全部受け止められるし、スムーズに動かすことができる。つまり、強く打とうとして姿勢を崩すと結局力を出し切れず、中正でしっかり馬歩で座っている状態に身体を持っていけばいちばん力を出せるということでした。

揺身の動作に関しては、基本の型が蟹形撞掌で、肘打の型はそれより難しい変化であると、それぞれの単操を行いました。
また揺身掌と磨身掌の違いとして、身法の回転の大きさの違いを示していただきました。揺身掌はほぼ270°の回転に対して、磨身掌は360°の回転と、磨身掌の方がより身法の動作としては大きいのだそうです。

2009年1月29日木曜日

2009冬:経験者講習会

練習メニューは以下の通りでした。
  • 龍形走圏
  • 龍形走圏対練
  • 単換掌対練
  • 穿掌対練
  • 迎面吸化掌対練
「知己知彼」(自分を知り相手を知る)とまず黒板に書かれると、今日は対練の日だと分かります。この言葉のうち、より大切なのは自分を知ることで、自分が分かれば相手も分かる、それが対練の第一の目的なのだそうです。では何を知るのか、それが「形」と「勢」で、これらを追求することで陰陽の状態を知る、これが対練の第二の目的との由。その基本となるのは「制人而不制于人」(人を制するが人には制されない)といった感覚で、これは自分が「心地よい」「安心」できるよう空間をコントロールことで実現できるそうです。
具体的には、例えば龍形走圏の対練において、まず手を合わせた1回ごとの勝敗を気にするのではなく全体としての勝敗に注意する。手を合わせてそのとき負けそうになっても無理に勝とうとしないで次に勝てるように動けばよいとのことでした。どういう状態が自分にとってよいのか、悪いのか、スムーズか、滞るのか、そうした感覚をつかんでいくことが「勢」を身につけることにつながるそうです。

また迎面吸化掌においては、太極拳の推手と同じにしてはいけないとして、吸化は吸胯ともいい、引くときは胯を使って全力で引くように、また押すときも全力に押すようにと教えていただきました。易筋経で重視する「筋出力尽」は対練においても大切で、全てを出し切ることではじめて何ができて何ができないかが分かる、自分を知るとはそういうことなのだそうです。
かといって、全力を出すとは何が何でも勝とうとかそういうことではない、重要なのは「角抵之戯」(相撲遊び)と言われるよう、全力でありながら楽しんで行うことである。それで「知己知彼」ができるようになるとのことでした。
そして、対練を通して自分のできないところを走圏に戻って鍛え直していく、これが正しい対練の学び方だそうです。

なお八卦掌対練の知恵として以下の特徴が挙げられました。今後時間をかけて学んでいくそうです。
  1. すべての走圏で対練できる。
  2. すべての掌法のすべての動作で対練できる。
  3. 相対した2人にどのような差があっても対練として成立する。
  4. 動作を変更することなく武器対練に移行できる。

2009年1月27日火曜日

2009冬:易筋経講習会(3)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 韋駄献杵(以下上盤)
  2. 鋪天蓋地
  3. 翻江倒海
  4. 乾坤旋転(以下中盤)
  5. 大きく獅子抱球(88式の夜叉探海の間の動作?)
  6. 獅子抱球の八方向
  7. 乾坤旋転の両端で獅子抱球
  8. 88式
易筋経の練習するにあたり、改めてその目的と方法を理解しましょうということで、洗髓経の次の言葉を引用されました。「易筋経已畢。外惑不能侵。飲食不能積。猶怕七情傷。元神不自持。」(易筋経の修行が終わると、外側から病の元が進入できなくなる。内側に食事による問題が蓄積されなくなる。それでもまだ情動によって傷つけられる恐れがある。生命力の根源となる元神は自然に保持されるものではないのだ。)との由。ここでの「外惑」 には仕事のストレスなど日常生活での疲労が含まれるそうです。「飲食」には食べ過ぎ、食べなさ過ぎが原因で身体の調子を悪くすることだとか。この2点の問題は易筋経で変えることができ、続く「七情」の問題については、洗髓経によって解決できるという文意ですが、李先生自身研究を進められていて、そのうちその成果を教えますとのことでした。
ここで挙げられている「外惑」「飲食」「七情」に加え、「間違った鍛錬」を加えて4つの要因が人生における健康を損なう四大要因なのだそうです。易筋経の練習はやってみるときついだけで目に見えた成果は出てこないように思えるけれども、だからといってしばらく学んだだけですぐに次のものに乗り換えたりとかしていては、いつまでも伝統的な修練は身につかないとのことでした。山を登るのと同じで、きついということしか登っていることを保証されないとの由。
特別な技を学んだりはしなくても自分自身を変えることができる、これが易筋経の特性で、実は武術の先人たちが、他人に見せないように秘密裏に練習していたのは、こうした腰や足を鍛える鍛錬方法であって、こんな単純な動作こそが最大の秘伝であったのだということを、改めて強調されました。
また易筋経による鍛錬の課程を以下の通りおさらいしました。
  1. 筋→霊(すばやい)
  2. 膜→濁(はっきりと感知されない)→精気(精神と気血)の培養
  3. 気血
通常の運動は筋を鍛えるのみで膜を通じた気血による栄養補給がないため、鍛えれば鍛えるほどやがて傷つき小さくなっていきます。気功などは気血を身体に通そうとするけれど、筋や膜が弱いとどれだけやっても全身に行き渡りません。力を抜いてゆっくり運動することで膜の感覚をつかもうとしても、筋や気血の助けがなければ感知できません。だから易筋経はこの三者をまとめて一気に練習することで完全な鍛錬とすることができるのだそうです。

さて、最後の15分に改めて88式の練習を行いました。前回に引き続き変更および再確認した点は以下の通りです。
  1. 鴨子分水的動作は片足立ちでなくてもよい。
  2. 逆に起式の弓歩撞掌の前を片足立ちにしてもよい。
  3. 龍形走圏後の左右の払いは後足を90°外に動かして行うが、全体の方向は進行方向をみる
  4. その動作後の踏むときはしっかり座る
  5. 7歩戻るときはまず前を見て、それから斜め後ろをみながら進む。
前回、前へ前へと出て行く感じがありましたが、今日はさらに下へ下へと沈む感じもありました。
 

2009年1月25日日曜日

2009冬:八卦掌講習会(7)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏
  2. 単換掌
  3. 順勢掌母掌
  4. 順勢掌母掌+翻身掌
  5. 順勢掌変化(磨身の扣歩蓋掌)
  6. 磨身掌母掌
  7. 磨身掌母掌+双扣双擺歩
およそ武術においてはもっとも重要なのが身法であり、「身法貴乎二」(身法は二つを貴ぶ)として、
  1. 竪(正)
の2点について、どちらか片方の度が過ぎるともう一方が失われるので双方をともに実現することが大切であることを示されました。また低くすることはたんに物理的に低い体勢を取るのではなく、身体全部を下に降ろすようにすることで、姿勢自体が高くても身法の低さは実現できることを見せていただきました。

また体表面に力を身につけるのは「俗学」(卑俗な学び方)であり、身体の奥に力をつける「勁沈入骨」こそが本当の練功であり、それは精神と身体をゆっくりと大きく静かに集中させて動かすことでしか身につけることができないとのことでした。

何か特殊な技や動きが秘伝とされていてそのうち習えるかもと期待していたらそれは間違いで、こうした身法の鍛錬こそが馬貴派八卦掌の最大の秘伝なのだそうです。

なお講習会後の食事会で伺ったところ、磨身時の扣擺歩はどちらも身法によってより深く回した方がよいそうです。
 

2009年1月24日土曜日

2009冬:易筋経講習会(2)

今日は練習前にビデオ上映会がありました。その内容は、18年前の李先生の太極拳の108式套路、李先生の最初の内家拳の先生である石先生の映像で、石先生の功夫はすごかったが、自分自身は練功で足腰を痛め、結局すべてを捨てて馬貴派を学ぶことにしたそうです。それから李先生の10年前の馬貴派の掌法(単勾式、熊形、鷹形など)と対練、5年前の対練(獅形、八卦刀など)の映像を見せていただきました。3月以降の会員制教室では対練も多く取り入れて練習していくそうです。

さて、練習メニューは以下の通りでした。
  1. 韋駄献杵(以下上盤)
  2. 鋪天蓋地
  3. 翻江倒海
  4. 燕子抄水の易筋版
  5. 乾坤旋転(以下中盤)
  6. 大きく獅子抱球
  7. 88式
「練功之大要全在培養気血為大要」(練功の最大の要点は気血を培養することだけをその要点とする)ということを改めて強調された後、前回の易筋経の原理と実践の理論を改めて話していただきました。またそれらの理論をまとめた言葉として「天地生物(随陰陽之所至)、漸次不驟、気至剛至、候至物成」(天地が生命を生む(のは陰陽の働きによる)ことは、段階的なものですぐになされるものではなく、気が満ちれば強さも満ち、時が来るのを待って生命は完成するのだ)という言葉が示されました。
 さて、前半に易筋経の練習を行った後、易筋経と密接な関係をもつものとして88式套路の練習を行いました。動作の半分は易筋経で行うことができるとの由。
 昨夏の講習会と比べると、具体的な動作の上では以下の点で変更が加わりました。
  1. 蟹形撞掌の後の鴨子分水的動作が片足立ちになった。
  2. 龍形走圏のかたちを取るときに穿掌でなく探掌になった。
  3. 2回目の蟹形撞掌の後の三回引く動作が下方向でなく上方向になった。
  4. 間に入れる探掌のほとんどが一歩出て後ろ足がついていく形になった。
  5. 7歩戻るとき後ろでなく斜め後ろを見て身体は起こす形になった。
  6. 最後の鈎手から手を払う動作でしっかり馬歩
  7. その後の蓋掌で逆の手が鈎手で後ろに伸びる
他にも変更点に気づかれた方、お教え下さればさいわいです。
  

2009年1月22日木曜日

2009冬:易筋経講習会(1)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 韋駄献杵(以下上盤)
  2. 鋪天蓋地
  3. 翻江倒海
  4. 燕子抄水の易筋版
  5. 乾坤旋転(以下中盤)
  6. 獅子抱球の八方向
  7. 大きく獅子抱球(88式の夜叉探海の間の動作?)
  8. 倒拽九牛尾勢?
  9. 葉底蔵花の易筋版
腰や背の充実以外に、個々の動作で強調されていたポイントをいくつか挙げておきます。1.の手の返しは開合の前で腕が動くときに手は回りません。6.と7.のぐるぐる球を転がす動作は、下の手から腰で押し出すように動きます。9.は動作の最後でさらに手を一伸ばしして単換掌のかたちを作ってから次の動作に移ります。

さて、易筋の道は、生命の道、陰陽の道ということで、理論面についてはこれまでのおさらいでしたので、あらためて記録しません。ただ、いくつか新たな内容がありました。
まず練気の方法は究極この三段階につきるそうで、それは、
  1. 守中
  2. 勿他想
  3. 待充周(持充周)
と、まず中正を求め、自身の有形と無形を一つにし、気が自然と充実してくるのを待つというものです。これを実際にまっすぐ立った状態(足はつま先から腿までぴったりくっつけ、後は走圏に同じ)を5~8分続けているとそうなるそうです。
2.の意味は一般的には外部への雑念を払うというものですが、それは浅い理解なのだそうです。また3.の要点は自分で気を引っ張り上げるのではなく、自然と上がってくるのを待つことにある、とのことでした。
気血を強くする要領であるところの「至大至剛」(大きくなるほど強くなる)は、身体の容量を大きくすることで、より多くの気血を集めることにあるそうです。具体的な行動においては、走圏/中正の要求が身体をふくらませる方法との由。もっとも気血が十分にない場合は、汗をかくことでその代替が可能で、気血を助けて筋を鍛えてくれるのだそうです。そのプロセスは以下の通り。
  • 汗→筋→気血→肝臓→血脈→血→気→血→血脈→筋(このへん不分明)
なお易筋の効果は、「病」「虚」「健」「強」「勇」→「道」とすすんでいくそうです。

2009年1月18日日曜日

2009冬:八卦掌講習会(6)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏
  2. 単換掌
  3. 双換掌
  4. 行歩撩衣単操(龍蹬虎坐)
  5. 双撞掌単操
  6. 揺身掌
  7. 龍形走圏
  8. 熊形走圏
会場が暖房なくて寒かったこともあって、最初に気候と練習の関係についての説明がありました。暑さ寒さは八卦掌の練習に関係ないが、風に当たると気血を集めづらく筋を伸ばしにくくなるのでそれだけは避けるようにとのことでした。
また練習がよくできたかどうかの判断基準として、練習を終えた時点で手足と耳と顏がほてっているか、着替えた後の帰り道で身体が軽快であるかを挙げられました。そうならなかったとしたら、気血が通じていない、気血の総量が少ない、そもそも練習方法を間違えているといった原因があるとの由。ただそうした問題はすぐに解決できることではないので、焦らなくてよいそうです。

さて、龍形八掌のうち前四掌が身法よりも歩法を重視して練習するのに対し、後四掌は身法を重視して練習するのだそうです。連綿と途切れのない身法の変化によって動作を行っていくとの由。というのも後四掌は前四掌からの変化で、双換掌→揺身掌、順勢掌→磨身掌と変化するのだそうです。
揺身掌は夏に行ったものといくつか異なる動作がありました。どちらも正しい動作だそうです。相違点は概略以下の通りでした。
  1. 指天挿地
    夏:横の双換掌 → 冬:縦の双換掌
  2. 扣歩蓋掌
    夏:横の双換掌 → 冬:大きく背中方向に戻る
  3. 揺身掌後の動作
    夏:探穿掌左右・下勢から普通に終了 → 円の中心に対して直角に探探穿掌・下勢から双扣双擺歩で終了
また単換掌では個々の動作に拘泥するなと言われたのにも関わらず、双換掌と揺身掌ではより正しい動作を行うようにと一見矛盾するような指導がありました。言葉上は相反するように聞こえますが、実際には、まず手の位置や足の位置をあれこれ微調整する様を示された上で、そうではなくもっと大きくのびやかに行うようにとの指導が行われました。つまり動作のレベルではより正しく厳密な要求を満たしながら、精神は個々の動作に囚われず大きく構えるという状態が求められたのです。

2009年1月17日土曜日

2009冬:八卦掌講習会(5)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏(穿掌)
  2. 三穿掌(下盤)
  3. 燕子撤剪の単操
  4. 三穿掌(中盤)
  5. 小扣小擺歩の単操
  6. 龍形走圏(穿掌)
  7. 熊形走圏
八卦掌は初期その名前で呼ばれる前は董海川の名前を取って川掌と呼ばれ、また穿掌とも呼ばれていたそうで(川と穿は発音が同じchuān)、それだけ穿掌は八卦掌を代表する技であるとのことでした。その穿掌に関する歌訣を教えていただきました。
  • 千人在外我在中、穿花打柳任西東。(千人に一人取り囲まれて、自在闊達に穿掌を打つ)
  • 好漢怕三穿。(豪傑も三穿掌を恐れる)
  • 好漢頂不住三穿掌。(豪傑も三穿掌には勝てない)
  • 千招不如掌一穿。(千の技もたった一つの穿掌に及ばない)
  • 穿鼻刺目不客情。(目鼻を穿掌でそぐのに遠慮はいらぬ)
  • 上穿下坐。(上は穿掌で下は座る)
穿掌の母掌である三穿掌には上中下三盤があり、下盤の特徴として以下の3つがあるそうです。
  1. 金鶏撤膀
  2. 燕子撤剪
  3. 金鶏独立
しかしこれら3つは実は直接穿掌と関係なく、穿掌に適した身体に変えるための動作なのだそうです。ちなみに李先生は穿掌を学ばれたとき、ひたすら金鶏撤膀の練習をさせられ、何でこれが穿掌の練習なのかと思っていたところ、ようやく金鶏撤膀から穿掌の動作に移って初めて穿掌の感覚がつかめたそうです。
また下盤は下勢があるので一見つらいように見えるが、実は下に下がりきったところで休むことができるのに対し、中盤はまったく休む暇がなく本当はこっちの方がつらいとして、以下の歌訣を教えていただきました。
  • 円転如意唯中盤。(回転を自在にできるのは中盤だけである。)
  • 中盤也要下腿腰。(中盤も腰腿を下げなければならない。)
単換掌の次に重要なのが穿掌で、単換掌同様長い時間をかけて修得しなくてはならないものですが、その修得の方法は次の段階を踏むのとの由。
  • 力→勁→勢→気→神
そして最後の神の段階まで練功がすすんでようやく穿掌を学んだといえるそうです。
なお、三穿掌のような母掌は、実戦の技術を考えながら練習するのではなく、自らの身体を変えるために行わなくてはならない、としながらも手法や歩法の変化による実践的な穿掌の用法を見せていただきました。穿掌の中に内包される「墊歩、跟歩、過歩、倒歩、箭歩」といった歩法も見せていただいたのですが、今回は核心となる重要なものとして「小扣小擺歩」の練習をしました。

今日の練習は最後の熊形走圏で終わったのですが、これは通常の練習が「静→気血→動」とすすめるのと逆で、「動→気血→静」とすすめたそうで、一般の運動とは異なって、最後に気血を散じないように終えたとのことでした。

2009年1月15日木曜日

2009冬:八卦掌講習会(4)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏(手形2種。通常版と穿掌版)
  2. 単探掌の穿掌版
  3. 双探掌の穿掌版
  4. 連探掌の穿掌版
  5. 回身穿掌(同探掌。ただし前に習った回身探掌とは動作が異なる。動作の意味からすると前の名称が間違っている可能性高し。)
  6. 穿掌対練の単操?
  7. 穿四門の一辺分?
  8. 穿四門
  9. ランダム穿四門?
※2-4の穿掌には定歩と活歩あり。
※母掌の三穿掌の練習は今日はなし。

まず龍形走圏から練習を始めました。歩いているうちに疲れてきつくなってくるが、そのときに上体がふらついてはいけない、そのときこそ、上体を安定させて気を緩めることなく、いっそう下へ下へと歩いていく。そうすることで、上下の気血が交じり合って沸き立ち、養われるようになるのだそうです。

続いて龍形走圏の手形の変化もいっぱいあって、そのうち通常の形が「推磨」の形であり、今日は別の形として「穿掌」の形を習いました。いつもより長めの走圏をしたため、母掌である三穿掌の練習は持たないだろうとのことで、そのまま、穿掌の練習へと移行しました。
さて、探掌と穿掌の変化の違いは次の通りです。
  • 探掌変化:前八掌+後八掌+隔単掌=17の変化
  • 穿掌変化:無限の変化
穿掌がとりもなおさず八卦掌を代表する技とされるのは、単に有効な攻撃の技術だからではなく、穿掌が八卦掌の全体系を内包するためだそうです。そのように言われる理由には次の三つがあります。
まず第一に走圏。一般に修行の過程は「道→法→術」と根本から末端に進んでいくわけで、八卦掌においてはそれは「走圏→掌法→探掌や穿掌」となります。つまり攻撃の技術を磨くにはまず本質である走圏がやはり肝要となります。穿掌を支える力は走圏によって培われるのです。
第二に方向。縦横に移動して相手とのベクトルを有利に設定します。
第三に変化。臨機応変に穿掌の攻撃のかたちは変化します。
この三つの要素によって穿掌は初めて穿掌たりえ、同時にこの三つの要素は八卦掌そのものの特徴でもあるのです。
なお穿掌の基本動作は単換掌の葉底蔵花にあり、相手にどこから手が出てくるか悟られないような変化は単換掌で培われます。また葉底蔵花と同じく手が動くのではなく身体が動くというのが穿掌の動作の根本。勢いで前にのめりかけることはあってもそれは動きの本質ではないそうです。
また穿掌の練習の方法は、最初に正しい形をしっかり作るよりも、自由にスムーズに動けるように練習することから始めて、その後で徐々に正しい形で行えるように修正していくのだそうです。これは「神」を鍛えるところから始める高級な練習方法であるとの由。ただし正しい形を気にしなくてよいといっても、核心部分は押さえておく必要があり、それは穿掌は手で打つのではない、ということだそうです。構えた手自体は動かず、身体の回転によってそれが穿掌に変化する、それが葉底蔵花の動作と相俟って相手に察知されなくなるのだそうです。ちなみに打った際に体が前傾しているように見えても、それはそのように打っているのではなく、極力中正を保って打っても、勢いで少し傾いてしまうだけであるということでした。
なお穿掌後の回転の動作は「左右磨身保無差」と言われるように磨身掌によって養われるので、これは後半の講習会で練習するそうです。
 

2009年1月13日火曜日

2009冬:八卦掌講習会(3)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏
  2. 単換掌
  3. 順勢掌
  4. 探掌(母掌)
  5. 単探掌
  6. 双探掌
  7. 連探掌
  8. 回身探掌
  9. 順身探掌
  10. 進退探掌
練功の進歩過程にはまったく変化のない時期と突然乱高下の進歩を始める時期とがあって、進歩のときに正しい教えにもとづいて練功しないとせっかくの苦労が無駄になるのだそうです。先人の残した次のような言葉があります。
  • 道 道高一尺 「深明要義、日久功成。」(原理を深く理解し、時間をかけて功夫を身につける。)
  • 魔 魔高一丈 「徳畜之。」(徳を積み重ねる。)
練功における前回示した二つの側面、時間をかけて練習することと癖や考え方を変えることと、上の話は連動していて、これこそまさしく性命双修(伝統的な修行の理想を説いた言葉で、大雑把な理解では、「性」=精神、「命」=肉体、となります。)であるとのことでした。

また龍形走圏の風格について、次の言葉を示されました。
  • 前秀後凶 (前の構えは美しく後ろの背中は猛々しく)※猛獣の自然な姿がまさにそうなので観察すべしとの由。

2009年1月10日土曜日

2009冬:八卦掌講習会(2)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 龍形走圏
  2. 単換掌
  3. 双換掌変化(横)
  4. 双換掌母掌
  5. 双換掌変化(行歩撩衣→穿掌→逆方向に撞掌→穿掌→。。。逆回りにするには双撞掌→穿掌→と続く)
  6. 熊形走圏
中正の三段階「身法中正」「手法中正」「歩法中正」のうち、今日の課題は「手法中正」で、特に「折胸運背」(胸を広げ落として背中を張る)を双換掌の指天挿地・下勢・大擺歩・双撞掌で行うことを練習しました。そうした上盤の中正によって身体の上下がつながり、「整体力」(全体の力)や「渾圓力」(一つにまとまった力)が発揮されるとのことでした。

2009年1月8日木曜日

2009冬:八卦掌講習会(1)

練習メニューは以下の通りでした。
  1. 熊形走圏
  2. 龍形走圏
  3. 単換掌
  4. 葉底蔵花単操
  5. 探掌母掌
  6. 蓋掌母掌
  7. 反背錘
  8. 圧掌単操
『武備笈要』に説かれる八卦掌の練習方法として次の言葉があるそうです。「先求正則。一正手足。再求形似。再壮風神。唯求華健」(まず正しい動作を求めて、手足を正しくする。次に全体の形をよくし、その次に精神をたかめ、ただ純粋な力[虎や獅子のごとき風格]を求める。※原文通りの引用ではありません。) と。

練習していてうまくできない原因には次の二つがあるそうです。
  1. 運動の欠陥(練習が不足している。)
  2. 性格の欠陥(考え方や癖を変えれてない。)
中正を保つという一見簡単な動作がうまくいかない原因の多くは2.の問題によるところも大きいとのことでした。